息子と同じ本を読む喜び

このブログは、noteでも公開しています!ほぼ同じ内容でも書いているときの感覚が違うから不思議です。

息子と同じ本を読む喜び|seico@編集とライターの人 (note.com)

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息子も本が好きになったらいいな。

そんなふうに、こっそりと願って過ごしてきた。

でも、子育てというのは親の思い通りになんて全くいかないものだ。息子が産まれて早々に悟ったワタクシ。

押し付けることはしないけど、本に触れる機会はさりげなく増やして様子をうかがうこと数年。

最近、息子と同じ小説を読んだり、最近はエッセイも共有できるようになって、それが不思議と、とてつもなく嬉しいことだったりする。

私が本を好きだから、同じ趣味を持ててうれしいのか。本に没頭するあの一種独特な体験を、同じ本で共有できることが嬉しいのか。

漫画も共有出来たら嬉しいのだけど、本はまた何か違った喜びがある気がする。

よく分からないのだけど、生きる楽しみが増えちゃったなーという気さえするから不思議だ。

息子の読書歴といえば、小学校中学年くらいのときに名探偵ブラウンシリーズにはまり、その後、多分5年生くらいから青い鳥文庫の「夢水清志郎事件ノート」シリーズにどはまりした。

全巻読まないと気がすまない!と言い出して、「お願い、本屋にあるだけ全部買って!」などとおねだりしはじめたときは、夫婦して心の中で「ヨシヨシ、いい感じだ!」とほくそ笑んだりしたものだ。

声をかけても、本を読んでいると全く微動だにせず、ご飯も食べない、お風呂も入らない……というのには、少し辟易するものの……。

息子は推理系の軽めの本が好きで、その後はズッコケシリーズなども読み漁った。

最近は、少しずつ大人向け?のエッセイと思われるような本も、息子と一緒に楽しめるようになり、それがとても嬉しい。

先日は、朝井リョウさんの「時をかけるゆとり」を、私とほぼ同時に読んだ。

私が、くすっと笑えるエッセイを書けるようになりたいなぁ、と思いお手本にしよう!と思い立って買った本だったのだけど、下ネタあり、学生生活ありで、これがなかなか楽しい!

小6の息子でも楽しめるのでは?とひらめき渡してみたら、「めっちゃおもしろいやん!」といって夢中になった。2週したとか。(実は私自身は、まだ途中までしか読めてなかったり……)

あの100km仮装して歩く話、おもろかったよね~、と面白さを共有できるのが嬉しい。

お次は、さくらももこの「もものかんづめ」。

こちらの本も、息子は声を出しながら笑って読んでいた。私も楽しんだ本を、息子が声を立てて楽しんでるなんて、なんて最高なんでしょう。

本気で、生きる楽しみが、増えた気がする。

ちなみに息子が読んでおもしろかったと『黒紙の魔術師と白銀の龍』(鳥美山貴子さん作)という児童書を薦めてくれた。

表紙が少しだけ怖い印象だったから「怖い本じゃない?」と聞いたら「全然怖くないよー」とのこと。読み始めたら、魔術的な部分もあり、けっこう怖かった。しかし最後までハラハラするストーリー仕立てで夢中になって読んでしまった。とにかくひどく虐げられる登場人物を、主人公の男の子たちが友人関係に葛藤しながらも助ける冒険物語で、最後は涙なしには読めなかった。いい本だった。

息子と一緒に読むティーンズ向けの児童書は、私自身の10代の頃の葛藤を思い出したり、私の中に、まだあったのか?とくすぶっていた気持ちを救い出すきっかけになったりと、なかなか味わい深いなと思う。

誰かに薦められた本を読みながら、この下りでは、薦めてくれたあの人は何を思ったんだろう…などと考えながら読み進めるのは、自分が見つけた本を読むのとは一味違う。その本は、私と作者だけで完結するのではなくて、薦めてくれた、その人が本に投影されて、また違った本の出会い方になる。

先日、息子の同級生の女の子が夢中になって読んだ!という本を貸してくれた。正確に言うと、その子は息子の保育園からの幼馴染である。お母さんと私は長年のママ友であり、息子の幼馴染とママ友がそれぞれに読んだ本だということで貸してもらった。辻村深月さんの『かがみの孤城』。

ものすごく怖いいじめっ子が出てきて、女の子同士の複雑な人間関係が出てくる。個性的な城の仲間達、謎めいたオオカミ様。日常生活とつながりながらも、ファンタジーやミステリー要素がたくさんで夢中になって読める。中学生それぞれに抱える悩みが徐々に明らかになって行く様が特に読み応えがあって、昔のことを思い出しながら読んだ。この本を、あの娘はどんなふうに読んだのかな?と考えながら読んだ。

だから私の中で『かがみの孤城』は、ただの『かがみの孤城』ではなくて、やっぱり2人が薦めてくれた『かがみの孤城』なのである。

大好きな友人や家族と、本を共有することは特別に嬉しいことだなと思う。

先日、息子が私の本棚から『ムーミン谷の仲間たち』を見つけて読み出した。

この本を初めて読んだとき、私はおそらく10代か20代の頃だったと思うのだけど、正直なところ当時は本の良さがよく分からなかったのだ。40代になった今読むと、ものすごく味わい深く、おもしろい本だとようやく思えた。

だから小学生の息子が読んでも、面白いと思えるのか?と半信半疑だったのだけど、息子曰く「けっこう面白いよ~」とのことで、夢中になって読んでいるのには驚いた。多分、物語のおもしろがりかたが違うような気もするのだけど、もしかしたら、子どもの頃と、大人になってある程度人間が成熟?してから2度楽しめる作品になっているかもしれない。

とにかく、私は再読して、ようやくこの作品の良さが分かった気がしたので、他のムーミンシリーズも気長に読んでいこうと思う。

息子とこれからも同じ本を読む時間が続いていけばいいなと願うのだ。